発達障害を抱える人のための障害年金制度の活用について社労士が解説!

こんにちは、社会保険労務士の豊田です。 発達障害を抱える方々が障害年金を受給するためには、一定の基準を満たす必要があります。しかしながら、その基準や申請手続きについては一般的にはよく知られていません。
本記事では、発達障害で障害年金をお考えの方々に向けて、具体的なポイントや注意事項をご紹介いたします。初診日や診断書の作成、申請書類のチェックなど、申請の成功に向けて必要な情報をお伝えいたします。

発達障害とは

発達障害とは、非常に広範囲にわたる総称として扱われ、行政上は、発達障害者支援法において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

一般的には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥(欠如)・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)等と分類されますが、併発していることもあり、明確な区分は難しいとされています。

また、学生時代には学習面での成績が良く、特に問題を感じなかった方が、社会人になって仕事をしていく中で、コミュニケーションがうまく取れない等の違和感を覚え、医療機関を受診し発覚するケースもあり、これは「大人の発達障害」として近年注目されています。

障害年金とは

障害年金は、公的年金に加入している方が病気やケガにより働けなくなったり、仕事に制限を受けるような場合に支給される年金制度です。発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)など)も障害年金の対象となります。

障害年金はいくらもらえる?

もらえる金額は次のとおりです。

⑴障害基礎年金(年額)
1級 1,020,000円+子の加算
2級 816,000円+子の加算

⑵障害厚生年金(年額)
1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級+配偶者加算額
2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級+配偶者加算額
3級 報酬比例の年金額

詳細はこちらをご確認ください。

発達障害で障害年金を受け取るためのポイント

次の3つの要件を満たす必要があります。

1 初診日要件

初めて医師の診察をうけ、病気を診断された日です。初診日が65歳未満であることも必要です。
先述の大人の発達障害として、20歳以降に発達障害と診断された場合、20歳以前から既に診断されている場合で次の保険料納付要件が異なってきますので、注意が必要です。

2 保険料納付要件

20歳以降に初診日がある、大人の発達障害の場合は次の要件を満たす必要があります。
・初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの期間で、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること(厚生年金や共済組合加入期間の期間も含む)。
ただし、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
・20歳前に初診日がある場合は、納付要件は不要です(ただし、一定以上の年間所得があると支給額の制限があります)。

3 障害認定日要件

障害認定日は初診日から1年6か月を経過した日を指します。
この日の時点で国が定める認定基準に該当しているかを審査します。
障害年金は、障害基礎年金(国民年金)、障害厚生年金の2種類あり、障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1〜3級という程度を表す等級があります。

各級の認定基準は次のとおりです。

1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

以上のように、特に3級では、労働が制限を受けるものとあるように、必ずしも働いていないことが障害年金を受給できる要件ではないということがわかります。

このような基準を判定するためのガイドラインが平成28年度に策定されています。
<国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン>
診断書(精神の障害)において、日常生活能力の判定と日常生活能力の程度という項目があり、これらの評価により、等級の判定の目安としています。

日常生活能力の判定
⑴適切な食事
⑵身辺の清潔保持
⑶金銭管理と買い物
⑷通院と服薬
⑸他人との意思伝達及び対人関係
⑹身辺の安全保持及び危機対応
⑺社会性
下表のように各項目を数値化していき、その平均値を取ります。

できる 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

 

日常生活能力の程度
⑴精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
⑵精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
⑶精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
⑷精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
⑸精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
となっており、これを医師に記入してもらいます。

上記の日常生活能力の判定で取った平均値と日常生活能力の程度で記入された数値を合わせると下表となっています。
なお、障害基礎年金には3級がありませんので、3級のところは「2級非該当」と読み替えてください。
また、この表によって必ず等級に該当することを保証するものではないので、目安として見ていくことが大切です。

この他に、1件ごとに現在の病状または状態像、療養状況、生活環境、就労状況、その他の要素を総合評価して判断するという仕組みなっております。

障害年金の申請に必要な書類

受診状況等証明書

初診日を特定するために必要な書類ですが、初診日から同じ病院を通院している場合は取得不要です。
初診日に行った病院が閉院していたり、カルテがすでに破棄されていたりする場合でも対応方法はございます。

診断書

障害認定日から3か月以内の状況を医師に書いてもらいます。
すでに期間が経過しており、遡及して請求する場合は障害認定日から3か月以内のものと請求時点のものの2つを作成してもらいます。

病歴・就労状況等申立書

発病時から現在までの時系列を申告するためのもので、請求者が自分で作成する書類です。
精神障害ではこの書類の内容も非常に重要になりますので、作成は慎重に行いましょう。
特に発達障害の場合は、出生時から現在までの時系列を整理し、作成しなければならないため、非常に長期間をまとめる必要性があり、かなりの労力を必要とします。

よくある質問

➀発達障害で障害年金は何歳からもらえる?子供でももらえる?

障害年金は20歳から受給できます。20歳未満では受給できません。

➁発達障害で障害年金の申請を社労士に依頼するメリットは?

社労士に依頼するメリットは主に次のようなことです。

・申請に必要な物や要件等をご自身またはその家族で理解して準備を進めなければなりませんが、社労士にご依頼いただければ、要件の確認から必要物の準備、依頼、確認、提出、問い合わせ対応等、全て対応いたします。
・お仕事をされていて忙しい方や一人で準備するのがご不安な方はご依頼いただけると確実に進められます。
・障害年金は一度きりの申請ですので、確実に受給するために社労士を使って、もらい忘れや本来受け取れるはずだった年金がもらえないという事態を避けることができます。

>>社労士に依頼するメリットについて、詳細を知りたい方はこちら

③大人になってから発達障害になっても、障害年金はもらえる?

大人になってから発達障害が発覚した場合でも障害年金はもらえます。
ただし、もらうためには要件を満たす必要がありますので、注意が必要です。

④ 発達障害で永久認定になるのはどんなとき?

自閉症の場合に永久認定になることもありますが、明確な基準は公表されておりません。
ほとんどの場合は有期認定だと思って良いでしょう。

⑤働きながらでも発達障害で障害年金はもらえる?

働きながら障害年金を受給することは可能ですが、例えば20歳前の場合、収入が多いと支給額が減額される等の決まりがあり、注意が必要です。

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